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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

「……さんきゅ。……俺、幸せ過ぎて……、不安になったんだ」

 彼はその顔で、微笑む。
 本当の理由は言わないまま、また自己完結してしまったようだけれど、だけどさっきまでの儚さが薄らいで、安心した。

 視線が絡む。
 甘く、熱い視線が、あたしを魅了する。

 揺れる彼の瞳は怯えによるものではなく、彼の情欲ゆえに。

「……感じて。どれだけ今まで、こうやって……お前を抱きたかったのか。どれだけ恋い焦がれる女と繋がりたかったのか」

 熱を帯びた声と共に、休止していた抽送が激しくなり、一気に官能の渦に取り込まれそうになる。

「柚、愛してる。お前だけを――」

「はっ、あ、んっ、すお……あたし…もっ」

 あたしの言葉は、急激に押し寄せる快楽の波には届かなくて。

「須王、飛んじゃう。捕まえ……ててっ、須王っ」

 彼はぎゅっとあたしの身体を抱きしめて、貪るようにキスをしながら、そのまま上体を起こして、下から突き上げてくる。

 あたしが須王を見下ろす、対面座位。

 角度が変わった刺激に声を上げながら、夜の月の光を浴びたようなダークブルーの瞳が、じっとあたしを見ていることに、切ないくらいに愛おしさが募る。

「……お前、凄ぇな。お前のナカ、熱くてとろとろで……俺を離そうとしねぇで絡みついてくるんだけど」

「な、なな……あああんっ」

 彼の貫き方が微妙に変化して、それに声を上げたあたしは、彼の首に手を回して、その筋肉がついた逞しい肩に顔を埋めてしまう。

「お前……ここだろ?」

「ひゃああっ、駄目、駄目ぇぇっ」

「可愛いな、本当に」

 ハスキーな声で、身体ごと弾ませる須王の言葉は、なにを言っているのかわからなくて。

「すげぇ、好き。お前が好きだ」

 さらに乳房を口で愛撫してくるから、反り返るあたしの身体は、彼の両手に指を絡めるようにして、体勢を保つ。

 須王が見ている。

 口を押さえる理性すら、愛おしさに負けて快楽に流されるあたしを、はしたない声を上げるあたしを。

 羞恥?
 いや、嬉しい。

 あたしもまた、正面から彼に、あたしのすべてを抱いて貰いたかったのだと気づいた。

 飾ることのない、あたしを愛して欲しい。

「柚……俺が好き?」

 あなたが、九年前から好きだから――。
 
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