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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
「ちょっと! ひとが話しているのに、なにスマホを取り出して!」
見つけたページを拡大して、四人に見せた。
「モグラより大きな目をしているのなら、読めますよね?」
四人、スマホを覗き込む。
まるで水族館で、魚を手にした飼育員の前で、芸を仕込まれたアシカが四体立ち上がって横一列に並んだショーを見ているようだ。
「モグラは太陽光に当たると即死するわけではなく、人間のように発汗して体温を下げることができないから、光の熱さで体温が上昇して弱ってしまうのが、正解です。太陽光にあたったら死ぬなんて、太陽が天敵なんて、モグラはドラキュラの親戚ですか?」
四人に、ダメージ1000!
イメージは、美内す○えの漫画ガ○スの仮面。瞳がなくなった白目だね。
黒い背景に集中線。小指立て気味、台詞は「なんですって!?」
「また、日の光に盲目になるのではなく、元々目が劣化しているんですね。モグラの生態も知らないでモグラを笑っても、第三者から笑われるのはあなた方ですよ? モグラの勉強をしてから、物を言って下さい」
さらに追加攻撃、1000!
HPが2000しかない弱小ボスは、瓦解して風塵寸前。
WIN!
その時だ。
笑い声が聞こえたのは。
「失礼。エリュシオンにモグラ博士がいるとは思わなかったもので」
早瀬だ。
昨日着ていたものではない、細身のチャコールグレイの背広に、薄灰色のシャツ、光沢あるダークブルーのネクタイをつけている。
夜通しあんなことをしていたなんて思わせない、いつも通りの顔。
「「「「は、早瀬様」」」」
四人、ハデスに傅く。
「その様づけはやめろ。俺は神でもなんでもねぇんだ。それよりお前らは会議だろ、用意」
「「「「了解しました」」」」
四人、あっけなく退場。
「ではあたしも、会議がありますので」
去ろうとしたら、早瀬が腕を掴んだ。
「お前には仕事がある。育成課に許可とった」
「なにを勝手に……」
「……お前にしか出来ねぇ仕事なんだ」
なにか切羽詰まっているようだ。
昨日とはなにか違う。
「ついてきてくれ」