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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
 

「隙あり!」

 片手拳を水面に叩きつけ、飛沫を彼の顔にかける。

「うわっ、お前……」
 
「駄目ですよ、須王さん。もっと外敵に反応しないと」

「お前は敵じゃねぇだろうが」

「わからないよ、よく言うでしょう。昨日の友は今日の……」

「お前、俺の友達じゃねぇもん。俺、友達は溺愛しねぇよ?」

「……っ」

「敵にはならねぇよ。そんな事態が仮にくるのだとすれば……、俺が変わるから」

 彼はあたしを抱きしめた。

「大丈夫。俺達は敵にはならねぇよ」

 ……その響きが、切実すぎて。

 彼は、あたしと彼が敵同士になるかもしれないということを予感でもしているのだろうか。

 なんでそんな事態が来ると、ちょっぴりとでも思えるんだろうか。

「隙あり!」

 バシャッ。

 彼が両手を組んで水面に叩きつけた水飛沫は、あたしがしたものよりもはるかに水量も多く。

 なんていうか……控えめに言って顔面平手打ち。

「あ、あたし……加減したでしょう!?」

「俺だって加減してるよ?」

 ふふんと斜め上に顔を持ち上げた、高慢な王様。

「してない!」

「してる!」

 そこからは水の掛け合いが始まって。
 味方でいるはずのあたし達は、簡単に敵同士となる。

「負けない!」

「望むところだ!」

 学生時代が抜けないと言えばそれまでだけれど、失った学生時代の時間を、今必死に取り戻している感じだ。

 彼もきっとわかっている。
 だから彼は、言い訳になると今まで触れてこなかった。

 傷つけられた者にとっての救いは、謝罪の言葉ではない。
 失って止まっていた時間の回復なのだと。

 きっと彼の時間も、あたしによって失われていたのだろう。

 だからあたし達は、貪欲にまで辛かった時間を上書きしようとする。
 
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