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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
 

「あのね……、実はとても恥ずかしいんだけど」

「……?」

「自分から、なんて。だけど……こうね、言葉以外に伝え方があるのだと、聞いてね……」

「なんの伝え方?」

 彼は可愛く顔を傾げる。

「言わせないでってば。うわ、恥ずかしい」

 あたしは両手で顔を隠す。

「……なに、お前が照れるようなことを、俺にしてくれるの?」

 にやにや。
 あたしの目からは、そうした類いにしか見えない表情が向けられて。

「元気ないから……、駄目?」

「………」

「……やっぱ駄目だよね、はしたないよね」

「お前、下にいるのは狙ってるわけ? 上目遣いで俺になにをしてぇの?」

「そ、それは……」

 顔がぼっと赤くなる。

「だ、駄目かな」

「俺が駄目だというと思う?」

「じゃ、じゃあ……目を瞑っていてくれる? は、恥ずかしいから」

 須王はくすりと笑いながら、言った。

「はい、どうぞ。お好きに」

 色っぽい唇が艶めいて誘っている。

 このひと、目を閉じても綺麗だ。
 勘が良い男のことだ、なにをしようとしているのかお見通しかもしれないけど。

「じゃ……初めてで、下手くそかもしれないけど、許してね」

「……初めて?」

 彼のそんな訝しげな言葉に気づかずして、あたしは片耳に髪をかけて、彼の……水着を下げた。
 
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