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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
  

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――残念ながら混浴ではねぇ。俺、お前の身体に触れたら抱きたくてたまらなくなるから、ちょっとひとりで、鎮めさせて?

 別に、今までずっと抱いてきたんだから、抱きたいときに抱いてくれればいいのに。ひとりで鎮めないでふたりで――などと思うあたしは、彼に毒されてきたのか。

 彼は心を通じ合わせてからの方が、ここ半年のように強制的に抱こうという意識が薄まったのか、戯れた延長で繋がっているように思う。

 彼は彼で、半年間と決別をしたいのか――。

 だけどまあ、公共のプールで彼のを舐めてしまった感触がまだ身体から離れずに、悶々と身体が疼いてしまう。

「いかんいかん。これなら痴女じゃない」

 恐らく、あたしの方が彼に触れたいのだ。
 
 彼の痕跡を消したくはなかったけれど、お風呂だから仕方がない。
 身体を洗って、温泉らしい湯船に入る。

 そして服を着て外に出ると、須王がシャツの第三ボタンまで外した格好で、ジーパン姿で壁に背を凭れさせるようにして立っていた。

 物憂げな横顔は、なにか声をかけにくい障壁のようなものがあったが、ゆっくりと彼の顔がこちらに向くと、ゆるりと微笑んだ。

「どうしたよ、突っ立って」

「……いや、考え事したいのかなって」

「お前は踏み込んでいいから。いつでも俺の領域に」

「……っ」

「まあ? 俺のを舐めようとするくらいは、入りてぇんだろ?」

「ちょっ、い、言わなくても……」

「無理」

 須王はあたしの腰を片手で引き寄せて言う。

「お前が俺にしようとしてくれたのは、来世でも忘れねぇよ」

「そ、そんなに覚えてなくてもいいから!」

「だから無理だって」

 ちゅっとリップ音をたてて、唇に啄むような軽いキスがなされた。
 
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