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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
「お前、俺を悶えさせる天才だからな。どうすんだよ、俺……どろどろに溶けて甘々になったら」
「今もじゃない?」
「は? 俺、セーブしてるんだけど」
「それで?」
「それでって……。悪ぃけど、俺がタガ外したらこんなもんじゃねぇから。お前監禁するよ?」
「か、監禁!?」
「俺、物騒だから。好きだと思ったものは、どんな手を使っても傍に置きてぇ奴だから。今さらだろ」
須王は人ごとのように、呵々と笑う。
じょ、冗談よね?
そう思って窺い見る彼の横顔はクールで、まったく冗談のように思えなかった。
エレベーターで、深いキスをしあったまま、到着。
いやもう、甘々だよね。
もうこの眼差しだけで、キスしたい気分になるぐらいは。
あたし、色惚けなのかしら。
しっかりしなくちゃ。
そう思って、顔をパンパン叩いているあたしの横で、須王が玄関の鍵にあたるカードをスロットに差し込む。
そして、ノブを手にして、動きを止めた。
「どうしたの?」
「………」
須王の顔は険しい。
「ねぇ、ちょっと」
「……火薬の匂いがする」
須王は目を細めて言った。
「へ?」
「入られたな。罠か、待ち伏せか」
「でも、ここには厳重なセキュリティが……」
「そのはずだったが、過信しすぎたか」
「ど、どうするの!?」
「……しっ。こっちに来る」
玄関のドアに耳をあてていた須王が、固い声を出してあたしを制した。