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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
キラキラとまた光ったと思った瞬間には、ヒュンヒュンと音をたてて矢継ぎ早に飛んで来るものにより、部屋のものが音をたてて壊れていく。
「ひっ」
「大丈夫だから」
須王があたしの耳を両手で塞ぎながら、その身体で、目の前で人が死んだ衝撃に震えるあたしを抱きしめる。
そしてボロボロとなった背もたれ付のソファを横向きにして盾にすると思いきや、こちらに向いたソファのクッションを上げ、そこにあるトランクケースから、長い筒はついていない銃を取り出す。
そんなところに銃!
あたし思いきり、お尻に敷いていたじゃないか!
「柚、耳を塞げ」
でも逆に、そんなところに隠さねばならない彼の環境を忍ぶ……なんていう暇もなく、両耳を塞いだあたしの横で、一緒に寝転んだまま……少し傾いた須王の銃口から火が噴いた。
どこにいるのかわからないけれど、光が点滅する方向に刺客がいるのか、彼の数発の銃弾が炸裂した後、向こうからの攻撃はなくなった。
「ちっ、逃げた。柚、怪我はねぇか?」
「う、うん……ないけど……、あのコンシェルジュは……」
「外でぼろ雑巾になっているだろう。あの程度の爆発なら命は取り留められる。だから先に撃ち抜いたんだろう、俺に回避させた罰として。まあ下手なこと喋られるわけにもいかねぇだろうしな」
「……っ」
「恐らく怪しげな紙袋を覗くために窓際に立たせたかったんだろう。紙袋はただの餌だ。爆発もこんな程度なら、ガス爆発で終わるだろう。……きっとご挨拶って奴だな。恐らく拉致を失敗し続けている黒服から、レベル2にパワーアップしたということの告知も兼ねたんだろう。殺る気ではねぇな、あくまでお前の拉致がメインみたいだ」
「殺す気がないなんて、なんでわかるの!?」
「火薬の匂いがわざとらしすぎるんだ。俺の素性がわかっているのなら、プロならもっと俺が気づきにくい方法をとる。本気に殺そうというのなら、あんなに目立つ大きな紙袋ではなく、もっと小さな取り付けが出来る、たとえばC4……プラスチック爆弾にするとか時限式にするとかの方法を選ぶ。今回のは、好奇心は身を滅ぼすとか、深入りするなという……揶揄めいた警告も感じるな」
「……っ」
あたしなんか多分、真っ先に紙袋を覗いていただろう。
餌に飛びつく。
まさしく、飛んで火に入る夏の虫。