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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
「ただまあ、俺が見破るのが前提の脅しで、俺がどの程度なのか試したという意味合いはあるだろう。これからは、失敗した刺客は仲間からの報復されるから、命がけになるということだな」
「なんで、仲間なのに殺さないといけないの!」
「そういうところなのさ、〝エリュシオン〟は。組織の……上からの命令があれば、仲間でも殺す。人間じゃねぇんだよ、ただの捨て駒の養成だ。親に捨てられた子供に、誰かのために役立つ方法を植え付けている。傍迷惑にも」
須王は遠い目をして、笑った。
「……新生エリュシオンは変わっていればいいと思ったが、どうやらそうはうまくいかねぇな」
「ねぇあのコンシェルジュ、ここから落っこちたのはわかるじゃない。頭撃ち抜かれていたのわかられたら、須王に殺人容疑をかけられるんじゃ……」
しかも須王は銃を持っている。
調べられたらまずいのではないか。
「はは。そういうために、棗がいるんだよ」
「棗くん?」
「ああ。だからあいつも、いまだ闇を引き摺っているんだけれどな」
「………」
棗くんは明るいし、冷静に判断して、きちんと物事を言えるひとだ。
だけど確かに、輪に混ざろうとしないあたり、孤高のオーラは出ている。見た目とは違う、特異な香りがある。
「それと、柚。お前、ちょっとバッグの中身見ろ。おかしなもの入れられてるかもしれねぇから」
「おかしなもの?」
「ああ。お前が来た途端に、こうなった。確かに俺に監視がついていたとはいえ、タイミングがよすぎだ」
須王は、別のソファの上に上がったままのあたしのバッグを持ってくる。
立ち上がっても、銃撃はなされなくなったようだ。
……窓はないけど。
「おかしなものといっても、お化粧した時にもバッグ見たけどいつも通りだったし……ポーチやティッシュ、お財布……」
あたしは主要物を取り出して、バッグを逆さまにして見たがなにも出てこない。ポケットも見てみたけれど、ざらつきもしない。
須王が、ティッシュを手にした。
「お前、キャバクラのティッシュ使ってた?」