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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
集めたのは、写真だけではないんだろう。
写真だけなら、無意味だ。
彼はあたしを守ってくれた。
あたしは彼を信じた。
だけど彼は、持たなくてもいい情報がある。
それはなんのため?
「あたし……上原家の娘だから、あなたは近づいたの?」
トラウマがぶり返す。
有名人の娘――そこになにか特別な意味があった?
あたしが、上原家の娘ではなかったら、彼はあたしに興味を持たなかったの?
マンションであたしは、彼の言葉は彼の本当の心だと思って、彼を受け入れた。
ねぇ、それは間違っていたの?
「柚……」
近づく彼から、一歩あたしは後ろに下がった。
「柚、それは違う」
「だったら、なんで写真が!!」
須王は苦しげな顔をして、一度言葉を呑み込むような仕草を見せ、そしてため息と共に口にした。
「十二年前、助けられたお前に会いたくて、お前の家に言って門前払いを食らったと言っただろう。あの時、対応したのは……お前の姉、碧だ」
「………」
「俺は一度聞いた音は忘れねぇんだよ。……組織で聞いた声は特に」
「……は?」
須王は真剣だった。
「俺は、お前の姉の声を、組織にいたひとりの声と同じだと思った。だとしたら、お前が妹だからという理由で、お前が引きずり込まれねぇよう、家族情報も一緒に情報を集めていた。今も尚」