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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
  

「俺のは、こんな安っぽくねぇよ」

「いやいや、あたし高いものか高くないものかくらいはわかるから」

「……俺が使っているものの方が高級だ」

「これも高級だって」

 別に言い争いをしなくてもいいことを言い争いながら、ひとつの部屋の前でカードをタッチして、ボタンを押すと女帝の声がした。

『今、開けるわ!』

 ……セキュリティばっちり。
 もう本当に、ここ幾らするのよといわんばかりの光景は、その奥にも広がっている。

 どこにも病室らしき雰囲気がない、ここはモデルルームか。

「「柚~!!」」

 入った瞬間、まとめ髪をしている女帝と裕貴くんが走ってきて、あたしの両脇を引いて部屋の隅に移動し、同時に聞く。

「「うまくいかなかったの!?」」

「へ……」

「だって連絡くれなかったじゃない」

「そうだよ、姐さんに連絡ないから」

 ……しまった、連絡するの忘れてしまっていた。

 あたしはぽりぽりと頬を指で掻いて口を開きかけると、いつの間にやら後ろに回っていた須王があたしの頭を後ろに倒し、反対側から驚くあたしの唇を奪う。

 そう、女帝と裕貴くんからガン見されている前で。
 しかも、舌まで入れて、ご丁寧に音までたてて。
  
 身体を蕩けさせるキスをしでかした。

 
 
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