この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
 

「……あのさ姐さん、辛いかもしれないけど、この先もずっと柚と須王さんの味方でいてくれるかな」

「え? あ……正直私、柚がうまくいくか心配で心配で、うまくいったらよかったと心から思うから、すっかり忘れてたわ、早瀬さん好きだったこと。私、気が多いし、今は友情を大切にしたいし」

「……。……きっと、そうしようとしてくれる姐さんにも、いい男現われるから。柚にとっての須王さんみたいな。そうやって柚のために心を押し殺そうとする、優しい姐さんがいいという男がさ」

「あら、そこは自分がいると言うところじゃない? 恋愛漫画の定石じゃない、裕貴の立場は。健気な年上女性にドキドキして、恋を自覚するものじゃない?」

「へ、俺が!? 無理無理、色々無理! ドキドキは別の方にしてるから、無理!! 俺、不可能なことは言わない主義だから。大体俺、夢見る漫画じゃなくて現実主義だから」

「はああああ!? なんでそこで思いきり拒絶するの! ちょっと、裕貴!」


 ……優しいふたりのどたばたとした会話は、あたしの耳には届いてはおらずに、あたしは早瀬の横に立ち、ベッドに横たわる小林さんを見舞った。

「がはははは、嬢ちゃん心配させて悪かったな。かすり傷程度なのに、こんな凄い病院に検査入院となるとは」

 病衣を着た上体を起こした小林さんは、いつも通り笑おうとしているのだが、覇気がなく顔色が悪い。

「なにがかすり傷よ。あばら二本皹入れているくせに。まあ折れていないだけでも、さすがというべきなのかもしれないけれどね」

 そう言ったのは棗くん。

 異質な入院ベッドがあるだけの、くつろぎのリビングスペース。
 近くのソファに座る棗くんは、髪をひとつに縛り眼鏡をかけながら、テーブルに広げていたなにかの資料をひとまとめに片付け始めている。

 スーツも着ており、美人さんの顔に、グロスで濡れた緋色の唇がぽってりとしていて、まるで秘書風な隠れ肉食を思わせる理知的な美女で、いけない妄想に涎が出そうだ。

 本当に男の子なんだろうか。
 あたし、女を辞めたくなってくる。
  
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ