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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
 
 
 そんなあたしを前に、男ふたりはにやりと笑って追い打ちをかける。

「大丈夫だから。お前がどこを舐めたのかなんて、勿体なくて棗にも言わねぇから」

「あ~ら須王、そんなに喜んでどこを舐められたのかわからないけど、優等生の上原サン泣かせちゃうなんて悪い男ね」

「おいおい、お前がふっかけてきたんだろう?」

「いえいえ、須王でしょ。好きな女の子にナニしてるのよ」

「ナニって?」

「ナニに説明いる?」


「要りません!!!」


「「ぶははははは」」


 どっちもどっちの確信犯。

 どっちもSだ。
 物騒育ちのドSな友達だ。

 目配せひとつでなにをしようとしているのかお互いわかる存在。
 そして、下ネタに慣れていないあたしは格好の餌で。

 絶対、同級生の気安さじゃないよ。
 絶対、同級生という名目で、あたしで遊んでいるんだわ!

 反論してやりたいけれど、あたしはこのふたりに勝る美貌の知能も品性も貯金や仕事に力も、なにひとつ敵うものがないことを改めて思い、項垂れた。

「うう……」

 唸りながらもぐすぐすと泣くあたしの頭を、須王が笑いながら撫でている。

「ほら、元気出せ。後で嫌っていうほど甘やかしてやるから。な?」

 慰めるなら、最初からするなって言うの!
 無駄に色気を垂れ流すなって言うの!

「要らないわ、そんなもん!」

 ぷいと横を向いたら、顎を掴まれてぐいと戻される。

「そんなもん? ほう……、だったら、いたぶられる方をお望みだな?」

 彼の目の色が変わってくるから慌てて言った。

「いた……!? い、いえ。是非、甘やかして下さい」

 もう、ふたりして身体を揺らして笑うなって言うの!
 怪我人の小林さんを、ひぃひぃ笑わせるなって言うの!

 ……とは口に出せずに、須王の手の甲をぎゅうと抓った。
 やっぱり皮だけだったけど。
 
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