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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
「もっといい曲なかったのかしらね。須王、あんた作れば?」
「嫌だね。大河原だというのなら、ますます関わりたくねぇ」
「なんだか知り合いみたいだねぇ、須王と教祖」
あたしが冗談っぽく言うと、須王が思いっきり顔を顰めた。
「冗談。あんな性倒錯者、知り合いでもなんでもねぇよ」
「……昔ね須王、偶然あいつに見初められて……お尻触られたんだって」
「棗っ!!」
「で、ロープでぐるぐる巻きにして警視庁の前に捨てたの。それが幼女連続殺害、強姦・死姦の肩書きつきの男の逮捕の決め手となったのよ」
「須王さん、表彰もんじゃないか!」
「冗談じゃねぇよ。尻を狙われたから捕まえましたなんて言えるか!」
縁とは不思議なものだ。
うん、須王はいつだって綺麗だったろうけれど、幼女ではなくて王様のお尻を狙ったのが運の尽き。なんで狙っちゃったんだろうね。
ひとしきり皆で笑った後、裕貴くんが質問した。
「ねぇ、黒服がそいつが教祖のおかしな教団の中にいるということは、狂信者なのかな」
「いやいや、あのひと達、神様の音なんて聞こうともしないで銃を使っていたじゃない。違うと思う」
「だったらなんで? 黒服を雇ってるの?」
九年前の天使を拉致した黒服と、須王と棗くんがいたエリュシオンという名前の地下組織が同じであるというのなら、九年前の面影を持つ黒服がいる組織もまた、私兵であるという可能性は高い。