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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
 

「いや違うな」

「私もそう思う」

「なんで?」

「確かに宗教法人は法の手を掻い潜るのに便利ではあるが、組織を育成・維持するには莫大な金が必要だ。さらに銃ら武器の密輸を始めとして、あのド変態が仕切れるわけがねぇ」

「ええ。AOPも関連があるというのなら、あんなクズが太刀打ちできない奴らがついているはずよ。一条財閥がそうだとは言い切れないけど」

「もしも……」

 あたしが言った。

「もしも朝霞さんらオリンピアが、ブレーンとなってお金を集めていたら?」

 オリンピアは方針が昔と違うのだ。

 だけどそうなれば――。

「朝霞と〝天の奏音〟が繋がっているということか」

 棗くんが固い声で言う。

「それだけじゃないと思うわ。音楽協会メンバーが上役の組織もきっと動いている。組織が大河原を援助しているかどうかは、まだ調べないとわからないけど。これはちょっと時間がかかるわ」

 組織――。

 須王と棗くんが潰したものが復活したものか。

「柚が狙われていたのは、二勢力だったよね。喫茶店で、朝霞にケーキを持ってきた奴と、銃乱射したのと」

 裕貴くんの声にあたしは頷いた。
 
「だったらさ、天の奏音と組織っていう奴のふたつじゃない?」

「ありえるけど、そのふたつが柚をなんで狙うんだろう」

 女帝が訝しそうにあたしを見た。  
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