この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
「いや違うな」
「私もそう思う」
「なんで?」
「確かに宗教法人は法の手を掻い潜るのに便利ではあるが、組織を育成・維持するには莫大な金が必要だ。さらに銃ら武器の密輸を始めとして、あのド変態が仕切れるわけがねぇ」
「ええ。AOPも関連があるというのなら、あんなクズが太刀打ちできない奴らがついているはずよ。一条財閥がそうだとは言い切れないけど」
「もしも……」
あたしが言った。
「もしも朝霞さんらオリンピアが、ブレーンとなってお金を集めていたら?」
オリンピアは方針が昔と違うのだ。
だけどそうなれば――。
「朝霞と〝天の奏音〟が繋がっているということか」
棗くんが固い声で言う。
「それだけじゃないと思うわ。音楽協会メンバーが上役の組織もきっと動いている。組織が大河原を援助しているかどうかは、まだ調べないとわからないけど。これはちょっと時間がかかるわ」
組織――。
須王と棗くんが潰したものが復活したものか。
「柚が狙われていたのは、二勢力だったよね。喫茶店で、朝霞にケーキを持ってきた奴と、銃乱射したのと」
裕貴くんの声にあたしは頷いた。
「だったらさ、天の奏音と組織っていう奴のふたつじゃない?」
「ありえるけど、そのふたつが柚をなんで狙うんだろう」
女帝が訝しそうにあたしを見た。