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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
 

 なぜあたしが狙われるのか――。

 それについては今回も回答が出なかった。

 せいぜいあるとすれば、棗くんが言った通りに世間知らずのお嬢様育ちをしていたあたしが、偶然か必然か現れた天使によってAOP実験の格好の的となり、その際になにか見聞きしたのではないかという推測のみ。

 だけどそれを隠蔽するためにAOP前段階のものが使われたというのなら、須王の言うとおりに記憶を改竄しているところが見当違いな気もする。

 その改竄された記憶により狙われているというのなら、改竄した側もなんで今さらあたしが必要なのかわからない。自分達で改竄したのにその元の記憶が必要だなんて、本末転倒もいいところだ。

 なにかしっくりこない。
 だからこそ、回答が出ないのだ。

「天の奏音と柚は、関わり合いがあるの?」

 女帝の問いにあたしは頭を横に振る。

「全く。大河原も宗教もマスコミでしか知らない」

 すると裕貴くんが腕組をしながら呟く。

「銃を乱射する黒服が、なにかの組織に属しているというのはわかるけど、やっぱ俺は、それが宗教に属しているようには思えないんだよなあ。黒服を育てているのが宗教というのが、そもそも納得いかないんだ。隠れ蓑としても……、希代の悪名高きロリコン大河原がこっそり社会に戻っていることも、教祖なんていうものをしているの事態も違和感ありありだ」

 終身刑の犯罪者をこっそりと逃がすことが出来るのは、刑務所に収容している犯罪者に影響力がある人物が動いたのは間違いないのだろう。

 その人物が大河原に指示をして天の奏音を作って黒服育成しているのなら、あたしを拉致することを指示したのは、その人物なのか大河原なのか、別の指示なのか。
 
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