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エリュシオンでささやいて
第8章 Staying Voice
「朝霞がさ、ブレーンだったとしても、柚が朝霞と別れたのはいつだよ」
「二年前」
「二年前に朝霞達が、その協会?とやらの援助を恩に思って、指示されたように大河原の宗教が黒服を育成出来るだけの資金を稼いでいた、としてもだよ? 喫茶店で毒物入れれるようなところも動いているんだろう? 指示した奴らが同じだとしたら、なんでひとつのところに頼まなかったんだ?」
「どちらかだけに頼むのが不安だから、とか、確実にさせるためにふたつにした、とかは?」
「でもさ柚。見た感じ、ケーキには致命的……とまでは言えない、なんだかよくわからない一般的ではない特殊な薬物を使っててさ、もう片方はヤクザ以上に、うんハリウッド映画並に、堂々と銃乱射の捕り物劇だよ? 協力体制はおろか、どちらかといえば、我先にとふたつの勢力が抗争しているような」
「それは私も思った。しかもレベルが違うというか。黒服は堂々と俺達を見ろ的にやってくるけど、片や変装して姿を隠そうとしてる。で黒服は動きが単調でがさつなのよ、臨機応変に頭を使うというよりは銃で脅して拉致しようとしてる。だけど喫茶店で言えばケーキ持ってきた謎の店員だって、持ってきた時に銃を突きつければよかったのよ。そうすれば簡単に柚は拉致できた。なにかどちらも、本当に柚を拉致る気があるのと言いたいのよね、私」
「どういうことさ、姐さん」
「ん? 私はパフォーマンスの線も考えてたりする」
「パフォーマンス!? 堂々と人前で銃乱射して!?」
「でも記憶を書き換えれるのなら、別にいいじゃない?」
女帝の言葉を受けて剣呑な光を目に宿した須王が、同じくなにか物騒なことを考えているようにも見える棗くんに尋ねる。
「……棗、月曜日の件の処理はどうなってる?」
「AOPが使われるかと思って、実は店員の中に私と共に部下を混ぜていたの。その報告によるとおかしな匂いはしていなかったみたいだし、店員は記憶を持っていたわ。ここまでは話したわよね、須王に」
「ああ。ということは、変わったのか状況が」
「ええ。昨日、あそこの店が空になった。店自体がなくなったの。それが悪報のひとつね」