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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

「やだ」

 そう言ったのは裕貴くんで。

「だって、棗姉さん仲間じゃなくて友達だもの。須王さんも柚も姐さんもクマのおっさんも、柚を守ろうとする奴はすべて俺、もう友達だし」

「裕貴くん……」

 鼻の奥が熱くなってくる。

「私も……ストレートに客観的に助言出来る〝友達〟がいてもいいと思ってます。生死を共にして戦ってきたんだから、今さらですし。気にくわないところはあるけど、それはお互い様。でも心の友達は柚だけだけどね」 

「奈緒さん……」

「棗!」

 突然須王が声を張り上げた。

「聞いてただろう?」

 彼が顔をねじ向けた後方には……いつの間にか寝ていたはずの棗くんが、壁に背を凭れさせるようにして立っていた。

 結んでいた髪が頬にかかり、なんだか色っぽい。

「聞いてたわよ」

 棗くんは笑って、片手をひらひらさせた。

「プライド高い早瀬須王が頭を下げるところなんて貴重。写メしたかったわ」

「……棗!」

 唇を吊り上げながら、棗くんはあたし達を見て言った。

「口が悪いふたりをよろしく」

 ……中々にこのひとも素直じゃないな。

 
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