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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

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 月曜日――。

 病室に揃っていた一同は、三つに分かれて行動することになった。

 あたしと須王はエリュシオンへ。
 裕貴くんは棗くんの送迎の元、学校へ。

 小林さんと共に病室に居残る女帝には、昨日日曜に棗くんが用意したノート型パソコンとWi-Fiを使って、須王から頼まれた資料をまとめるそうだ。

 不得意な表計算を、戻ってきた棗くんがソフトの使い方をレクチャーするらしく、火に油のように反発しあっていたふたりが、ひとつのことをするのは、ふたりなりの迎合のつもりなのかもしれない。

 せっかくの有給なのだから、お休みにしてあげてもいいものをと思うのだが、とにかく組織で色々辛い目にあって人間不信に陥っただろう棗くんに、今彼が居る環境はそれとは違うということを認識して貰いたいと思う。

 あたし達は敵ではないと。

 須王の出勤車は、点検から戻った黒いシボレー。
 アウディは棗くんに貸して、三人以上で行動する時に使うらしい。
 ちなみに小林さんのランクルは、小林さん同様に損傷が激しいらしく、シボレーを見て貰った修理工場で入院中。

 土曜日に、あれほど凄惨な顔で棗くんのことを心配していた須王は、あたしが必死に宥めたせいなのかなんなのか、

――気のせいだと、思うようにする。

 と宣言した通り、見事なまでにその色を払拭させて、いつも通り棗くんと言葉の応酬をして、疑っていたことを微塵にも感じさせなかった。
 
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