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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

 そう、それが簡単に出てきた結論。
 パソコンのシャットアウトはパスワードなしで出来る。
 問題はパソコンの起動に関してだけだから、もしも茂がそれに協力をしているのだとすれば、なにも問題がない。

「ネットワークに侵入するためには、あたしのパソコンがついている必要があります。ですが、課長が協力しているのなら、あたしのパソコンのパスワードはあってないようなものでしょう」

「だからさぁ、チーフ! あんたのパソコンに手間をかけてまで見ないといけない、なにがあるのかって聞いてるんだよ。あんた馬鹿?」

 ……柚、ぐっと堪えて。

「そうですね、チーフクラスから上役が覗ける共有フォルダくらいしか大切なものが入っていません。それなら課長のパソコンから見ればいいし、課長のパソコンからコピーすればいい」

「じゃあなんだって言うんだよ、もったいぶらないで言えよ」

 うう、くじけそう……。

 その時ノックがされて須王が入って来た。

「上原、オリンピアもOK」

 突如現れたエリュシオンのハデスに、青ざめたのは誰か。

 あたしは言った。

「今回のHADESプロジェクト情報の流出の件で、実際HADESプロジェクトについての大まかな資料らは共有フォルダには入っていたものの、詳細は別のフォルダが用意されていて、HADESプロジェクトメンバーしかアクセス出来ないようになっていました」

 須王もあまり社内のパソコンを開かないからわからないし、あたしはメンバーではなかったから、HADESプロジェクトについてアクセス権限がある別の共有フォルダがあることは知らず。

 チーフではない女帝はいつもそのフォルダしかアクセスしていなかったから、あたしと話していても特に違和感もなかったようだ。

 あたしが正式なメンバーになったのも最近で、シークレットムーンの香月課長が作ったネットワーク監視システムの調査報告によって、ネットワーク内のフォルダの階層もすべて明らかになってわかったのだった。
 
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