この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
「恐らくは詳細フォルダにもなかった、……ボーカル選考部など、プロジェクトの核となっているものが、あたしが特別に記録していないのかと、あたしのパソコンを探っていたんですね」
さらにあたしは要らないファイルを整理した時に、罠をしかけておいた。
考えられるのは、共有フォルダ内容ではなく、須王があたしを特別に連れ回していたことに対する、あたしだけが知る特別な情報探し以外には思えなかったから、『重要』というファイル名で適当な嘘の情報を書いて保存していたのだ。
あたしは日誌のようになにがあったとか、ファイルに細かく書き記しておく癖がある。
それを知るのは同じ育成課だ。
――社内メールにもアクセスがあったわよ。恐らく須王とやりとりしているんじゃないかと思われていたんじゃ?
メールじゃなくてLINEに来るんですけれどね。
なにより肝心のボーカル不在のままのプロジェクトは異質だ。
そこになにかあるのだと考えるのが道理と言えばそうだ。
隠し球からすべて根こそぎ奪うことで、会社や須王にダメージを与えるのが目的だったのかはわからないけれど。
まんまと踊らされたその犯人はオリンピアに伝えてくれたようで、あたしが会議室にいる間に、須王は確認をとったのだ。
あるいは、オリンピアの追記公表があったのか。
ダミーファイルを置く案は須王であり、オリンピアが動き出すと須王が言っていたのは、これによる。
ただ、課長はHADESプロジェクトの正式な初期メンバーではなく、オリンピアの横やりでの問題解決として、新規参入した存在だ。
今見た感じは、彼自身早く帰ったりと、この件に関しては不正アクセスの協力はしていても、あまり好意的ではない反応に思えた。