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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
そこには、あたしが須王とどこどこを回ったという記録も書いている。
直帰の場合は次の日の朝に必ず書いて提出している。
だからそれを見るのに茂のパソコンも必要で、個人的に保存してあるファイルを見るのにもあたしのパソコンも必要で。
さらにあたしのパソコンの不正アクセスは、課のネットワークを利用した茂のパソコンからの操作以外にも、あたしのパソコンから直接(ローカル)操作した形跡があったらしい。ケースバイケースだったのか。
不正アクセスされました、の文字がたくさん出たのは、あたしが香月課長のシステムを使うときは起動させるたびに本人認証をしないといけないボタンがあるのだが、それをなされないままに茂のパソコンから遠隔操作されている上に、ローカルも動かされたために、警告として通告されていたらしい。
まあ、棗くんが頼んだ……多分内調仲間と思われる機関における、香月課長のプログラムの解読からの推測らしいが、日本の最高峰の技術を持ってしても、すぐには香月課長のシステムは解読出来なかったようだから、香月課長のレベルはかなり高いものだ。
言われてもあたしの頭で理解するまでに、棗くんに何度もかみ砕いて説明させてしまった。
まあそんなところで、あたしがそんな監視システムなどという武器を持っていたことを知らずに、アクセスしてしまったと思う藤田くんは、
「そ、そんな……っ」
などと否定もしないで素直に崩れ落ちてくれた。
こんな短期間で牧田チーフを本当に落としたなんて凄いと須王を見たら、悪戯っ子のような顔を向けてくる。
……はったりらしい。
須王の言葉は予想以上に効いたようだ。
藤田くんにも、茂にも。
「それと水岡。お前のメールも抑えた。悪いがいつもアクセスしている検索サイトのフリーアドレス、ログインしたままだったろう」
「なっ」
「お前朝霞の妹の友達なんだって?」
腕を組みながら、長い足で入り口を通せんぼをしながら、不遜に笑う須王。
これも棗くん情報だ。
本当に棗くんは探偵と言ってもいい。
須王が本当にメールでのやりとりを確認したかはわからないけれど、本人を見る限りにおいては、真実なのだろう。
ネットをいつも見ていたのは、なにか連絡でも待っていたのだろうか。