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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
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あたしは平和的に話を聞き出そうとしていたのだけれど、チーフとしてのあたしの存在は、かの有名な早瀬須王の一喝には敵わなかったらしく、特にあたしを舐めきっていた藤田くんは怯み上がり、めそめそと泣きながら須王に許しを乞うている。
うん、いいよ。あたしはエリュシオンの背後霊。
チーフとしてここに二年居たって、まるで存在感がないからね。
それに一番辛い思いをしたのは須王だしね。
慣れきった諦観であろうとも、面白くないあたしが先に会議室から出て自席につくと、なにか二階が騒がしい。
なにがあったのか聞こうと思っても、育成課は誰もおらず、女帝がいなければあたしが気軽に尋ねられるのは須王しかいないが、誰も不在の今、ひとりわたわたしていても仕方がないと、となりのイベント課で聞いてみた。
「オリンピアが、うちが進めていたのと同じポスターや、雑誌の広告を出しているんです。それがオリンピアのものに差し替えろと今村部長からの指示があったと広告代理店は言い訳していて、部長はそんなこと言っていないと、広告代理店の担当者と責任者を呼びつけて、今下で大喧嘩しているようです」
イベント課の篠塚さんにはまだティラミス効果があったらしく、そう答えてくれた。
今村企画事業部部長は、須王のプロジェクトに参加していて、須王を全面的にサポートしてきた立場にいる。
だから須王も、部長には気軽に話をしているようなフシがある。
エリュシオンのHADESプロジェクト敢行の旨は、先週には広告代理店に通告がなされているはずだ。
それを仮に部長がオリンピアに差し替えろと指示したのなら、本当にそれでいいのか、エリュシオンの話はどうなったのか、こちら側の担当者に確認の電話が来てもいい。