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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 


「なんだか、ざまぁとかは思えねぇな」

 車を運転しながら須王は苦笑した。

 牧田チーフには救急車を呼んだ。
 デリケートな部分の手当は、やはりきちんとして貰った方がいいだろうから。それに頭を打ち付けていたことで、あんなにアパートがどしんどしんと振動を感じていたのなら、もしかして頭蓋骨がどうにかなってしまっているかもしれない。

 羞恥の治療だろう。
 だけどそれは自分が招いたことだ。
 冷たいかもしれないけれど、それくらいは自分でなんとかして貰いたい。

「あのさ……」

 躊躇いがちに須王が言う。

「牧田から鎖を外した時、あいつ、ひとこと……俺に言ったんだ」

「なにを?」

「……久我稔、エリュシオンの社長の名前を。牧田を指示出来た側にいると言いたかったのか、朦朧として社長に助けを求めていたのか、それはわからねぇけどな」

「……そういえば社長、須王の一大事に会社に出てこないわよね」

「ああ。一応三芳が連絡をしているらしいが、現われねぇな」

 ……すべてが怪しく思えてしまう。
 すべてが、計画的に配置されていたんじゃないかと。

 その時、須王のプライベート用のスマホが鳴った。
 須王はスピーカーにした。

「どうした?」

『大丈夫かなって。あ、こっちは平穏よ~』

「そうか、こっちも大丈夫だ。たった今、パソコンからデーター盗むように指示をした奴が休んだから、自宅に話を聞きに柚と来たところだったんだ」

『あら、推測通り他課でのプロジェクト関係者だった?』

「ああ。それで家に来たら、偸盗の音楽がかかっていて、鼻フックに玉口枷(ボールギャグ)とドリルバイブで性処理調教されていた」

 棗くんが息を飲む声が聞こえた。
 
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