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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

『随分と、自己主張してきたわね』

「だろう? さらにボールギャグを取ったら、柘榴の残骸が出てきた。で、あとは救急車に任せて今帰途中だ。……お前、これをどう見る?」

『……威嚇ね。しゃぶしゃぶ店と同じじゃない? 今回そのひとひとりの露出なら、組織の性処理班ではないわね。組織の者のように見せかけられただけ』

「根拠は」

『はは、須王もわかっているでしょう。組織は痕跡を残さない。少なくともそのひとは生きていて、外部と会話出来る状態にあった。それを見逃すわけはないと思うわ。ま、私が知る組織のままであれば、の話だけど』

 須王はにやりと口端を吊り上げる。
 それは須王も棗くんと同じ意見だったからなのだろう。

「俺と柚がいるエリュシオンの社長、久我稔を調べてみてくれねぇか? そいつが久我の名前を出したんだ。ちょっとそいつは巨漢だから、ブランドもの身につけている久我と恋仲にあるとは考えにくいんだ」

『だけど社長自ら引き抜いた、あんたを窮地に陥らせるために、そんなあんたにとって箸にも棒にもかからない女を使うかしら?』

「ああ、俺もそこがひっかかる。久我がやらせていたのなら、これは俺に喧嘩売っていることになる。俺からすべての契約を白紙に戻して、独立したり他に行ったり出来る状況にするということだ」

 ありえない。
 エリュシオンは須王で持っているのだから。
 エリュシオンを潰したいのなら話は別だが。
 
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