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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
「お前、ベリーが好きになったのはいつから?」
そう質問してきた須王の顔から、笑みは消えていた。
「え、なによ突然」
「……ちょっとさ、ひっかかっているんだ」
「ひっかかるってなに?」
あたしは考え込むが、答えが出てこない。
「須王は好きになったものは、いつからだって言える?」
「言っただろう? 十二年前からお前を好きだって」
「そ、それじゃなくて。嫌いなものって、理由があったから嫌いになったわけでしょう? それは記憶に残るじゃない」
「……俺のこと言ってる?」
「だから、あたしと須王のことは置いておいて。置いておいて、ね? 須王は肉好きじゃない。だったらいつから肉が好きだったのか、言える?」
「組織出てから。母親や組織から肉なんて食わせて貰ってなかったから、その反動で肉が好きになった」
「ああ、あなたはそうなのね。……なんて言えばいいのかな、嫌いなものってインパクトが強くて明瞭に記憶に残るけど、好きになったのって曖昧なのよ。気づいたら好きだったっていう感じで……」
「家でベリーを食ってた? たとえばデザートとか。お前の家お手伝いさんが料理を作ってたんだろう?」
「あ、うん。確かにデザートは作って貰ってはいたけれど、母さんがベリーのアレルギーなの。昔は大丈夫だったんだけど、突然発症したみたいで。だから昔、もしかしてベリー系のデザートを食べたことがあったかもしれないけど、ブルーベリーソースやアイスもすべて、家族も食べなくなった」
「ベリー全般?」
「そうみたい。ベリーにはバラ科とそうじゃないのと色々あるみたいだけど、全部駄目みたいで」
「……。実は俺もそうだったんだ。親がベリー食べたら駄目だから、俺も今まで食ったことがなくて、お前から飴を貰って初めて食べたようなものだ」
「へぇ、結構ベリーが駄目というひとはいるみたいだけど、お互い体質引き継がなくてよかったわね。本当に母さん苦しそうだったから」
「……だな。でもなんで九年前、飴を持ってた? 友達?」