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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 


 *+†+*――*+†+*

 
 あたしは月曜日にもうひとつやることがあった。
 
 それは――隆くんだ。

 金曜日、自ら約束を違えて指定場所に黒服を寄越した隆くん。
 彼は、組織に関係するのだろうか。

――駄目だ、俺も行く!

 須王は立ち会いたいと言ったけれど、あたしは隆くんをまだ信じたかった。
 お人好しかもしれない。
 須王があのコンビニに来なかったら、あたしはどうなっていたかはわからないが、ティッシュの中に発信器を入れたのが同じ黒服だというのなら、少なくともあたしを拉致するというよりは、GPS的な場所特定が目的だったのではないかと、思うんだ。
 即ち、須王のマンションに入ったのが確認したから、あのコンシェルジュが動いたと考えれば、隆くんの役目は思った以上に軽いものなのかもしれない。

 彼が脅されているのかなんなのか、あたしは確かめたかった。
 彼に罪悪感があるのかどうか――。

 そこで須王との妥協案として、電話を通話状態にしたままならOKということで、待機中の須王に会話を聞かせることにして、あたしは集めたアンケート用紙を持って、上階パラダイスに赴いた。


 十三時のパラダイスはいつもの如く混み合っている。
 ……いや、いつも以上か?

 隆くんの姿が見えたから、ちょいちょいと呼んだ。

「あ、柚さん! 大丈夫でしたか?」
 
 会った途端に、にこやかな笑顔を向けられて当惑する。

「金曜日は残念でしたが、腹痛がよくなったらお店、行きましょうね」

 邪気のない笑顔。

「腹痛?」

「ですよね? わざわざお友達が伝えて下さいましたよ? だから柚さんは今日は行けないと」

「だ、誰が!?」

「ええと、髪がくりんくりんとして、目がばっちりの華やかな美人さんでした。首からぶら下げている名刺が、三芳さんとありましたね」

 ……まさか女帝?
 え、女帝がなんでそんなこと!?
 
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