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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
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あたしは月曜日にもうひとつやることがあった。
それは――隆くんだ。
金曜日、自ら約束を違えて指定場所に黒服を寄越した隆くん。
彼は、組織に関係するのだろうか。
――駄目だ、俺も行く!
須王は立ち会いたいと言ったけれど、あたしは隆くんをまだ信じたかった。
お人好しかもしれない。
須王があのコンビニに来なかったら、あたしはどうなっていたかはわからないが、ティッシュの中に発信器を入れたのが同じ黒服だというのなら、少なくともあたしを拉致するというよりは、GPS的な場所特定が目的だったのではないかと、思うんだ。
即ち、須王のマンションに入ったのが確認したから、あのコンシェルジュが動いたと考えれば、隆くんの役目は思った以上に軽いものなのかもしれない。
彼が脅されているのかなんなのか、あたしは確かめたかった。
彼に罪悪感があるのかどうか――。
そこで須王との妥協案として、電話を通話状態にしたままならOKということで、待機中の須王に会話を聞かせることにして、あたしは集めたアンケート用紙を持って、上階パラダイスに赴いた。
十三時のパラダイスはいつもの如く混み合っている。
……いや、いつも以上か?
隆くんの姿が見えたから、ちょいちょいと呼んだ。
「あ、柚さん! 大丈夫でしたか?」
会った途端に、にこやかな笑顔を向けられて当惑する。
「金曜日は残念でしたが、腹痛がよくなったらお店、行きましょうね」
邪気のない笑顔。
「腹痛?」
「ですよね? わざわざお友達が伝えて下さいましたよ? だから柚さんは今日は行けないと」
「だ、誰が!?」
「ええと、髪がくりんくりんとして、目がばっちりの華やかな美人さんでした。首からぶら下げている名刺が、三芳さんとありましたね」
……まさか女帝?
え、女帝がなんでそんなこと!?