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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 
 
 あたしは、コンビニと言った。
 それに対して隆くんは、木場駅のコンビニと言った。

 それだけで答えは出るだろう。
 ニュアンスから導き出した当てずっぽうな答えであったとしても、あたしはそれを聞いて、もう彼と今まで通りには出来ないと思った。

 彼を、敵か味方か追い詰めようとしなかったのが、あたしなりの誠意。
 助けて貰ったことは、本当にあたし感謝したから。

 くそ、泣くものか――。

「なぁ――」

 突然に肩を叩き、そう声をかけてきた背広の男は、須王ではなく。

「須王は元気かな、エリュシオンのモグラちゃん」

 ややくせっ毛の黒い髪とワイルドな容貌。
  
「ええと……、忍月コーポレーションの宮坂専務?」

「当たり。ようやく覚えて貰えてなによりだ」

 彼は笑った。

「単刀直入に聞くけど、須王と連絡がまったく取れねぇんだが、須王をここに黙って連れてきてくれねぇか?」

「え、ここにですか?」

「ああ。俺が行くと、絶対あいつ機嫌を損ねるから。須王がここで食事をするお前だったら、須王が釣れると踏んだ」

「いやいやいや……。だったらエリュシオンの外線で呼ばれた方が……」

「とうにやった」

「ではスマホの留守電にも」

「それもやった」

「では出るまで粘ってみたら……」

「粘って、ようやく出たと思ったら切られた。居るのならとさらに呼び出していたら、今度は電源を切られる」

 ……ん?
 なにか聞いたことがあるような……。
 
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