この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
「さらに友達を使ってみても、まるで連絡がねぇし、相変わらず出ねぇし。その友達までもが適当に返事しているだけで、須王と直接喋らせてくれねぇんだ。俺、頼み事は聞いてやってるのによ」
――私、電話に出させますね~なんて毎回言ってるのよ、それなのに頼み事なんて、決まり悪いったら。
「あの、つかぬことをお聞きしますが」
「なんだ?」
宮坂専務は腕組をして、上からあたしを見下ろす。
「宮坂専務の下のお名前はなんですか?」
「なんだ、俺に興味があるのか?」
「いえ、あなたへの興味は、まったくないんですが」
「……またか」
「え?」
「いやいや、こちらの話。で? 俺が下の名前を言ったら、どうなるんだ?」
「でしたら、多分もれなく須王がついてくるかと」
「は?」
「あ、じゃああたしからお尋ねします。専務のフルネームは、宮坂……渉さんですか?」
同時に、正解の大声が響き渡った。
「てめぇ、渉!! 柚に手を出すな!!」
「……ね?」
あたしは引き攣りながら、専務笑って見せた。