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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
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確かに、くせっ毛のところとか、言葉遣いとか、(やや)ワイルドなところとか、宮坂専務と須王には似通ったところがある。……須王本人が認める認めないは別として。
それを知っていたのに、どうして宮坂専務は渉さんではないと、今まで除外してきてしまったのだろう。
考えてみれば、以前食堂で専務が須王に声をかけた時も、須王は目も合わせず、相手を嫌悪しているというより存在を唾棄したような態度を取っていた。
電話を無視している時のように。
「帰るぞ」
須王があたしの手を掴んで出ようとするから、あたしはしっかりと地面に足をつけて、踏ん張って抵抗した。
「おい、柚!」
「話せばわかる!」
「あ゛!?」
しかし王様の目力は凄まじい。
ぶるぶると震え上がりながらも、エリュシオンのモグモグは頑張る。
「お話。ね?」
かなり背を丸めて縮こまりながら。
「……お前、こいつが誰だかわかって言ってるか?」
「わかっているわよ。専務が渉さんだったのね」
「それでこいつと話せというのか、お前」
鎮められたその声は、彼の怒りと反比例。
「うん。後でなんでもお願い聞くから、ちょっとお話しよう」
「冗談じゃねぇよ」
「じゃあもう、須王のお願いは聞かないね?」
にこっと笑って見せた。
「お前……」
「ん?」
……あたしだって、どんなことを言われるかわからない須王の頼みを聞くんだ。それくらいしても、あたしは彼らに話をさせたかった。
極悪非道で、須王を見捨てた渉さん。
あたしには、専務がそういうタイプには見えなかった。
その声から、言葉尻から、脅迫とかそういう物騒な思惑なしに、ただ須王と話したいだけのようにしか思えなかったから。
パラダイスでは隆くんに見られると思い、パラダイスを出てその上である六階の休憩スペースに、心底嫌がる須王となぜか笑い転げる専務を連れる。