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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

 笑い転げる専務を横目に、あたしは目を細めた。

「付き合ったらの話ですよね。でもあたしと須王は、付き合っては……」

「は!? それマジで言ってる!? 隆にわざと言ったわけじゃなく!?」

「い、いや……別に付き合おうという話をしてないじゃない?」

「お前……っ、今さら……」

「ぶははははは。付き合っていたつもりなのは須王だけか。まあ、前見た時よりも、名前で呼び合える仲になったということに拍手を送ろうか。おめでとう」

 パチパチパチ。

 乾いた拍手に須王がキレ……る前に、あたしは彼の手を握った。

「おーおー、所構わずいちゃついちゃつきやがって。初々しいな」

 あたしのとった行動の理由をわかっていながら、元凶の専務はそんなことを言う。

「いちゃついているところ悪いが、須王に話したいことがある」

 須王はあたしの手を離さず、余裕であたしの指を指の腹で撫でている。
 かなり大胆不敵な王様だから、手を離そうとしたけれど許しては貰えず、とにかくにやにやする専務の目から逃れるために、あたしの膝に置くしかなかった。

「悪いと思ってるのなら、話す前にさっさと会社に帰れ」

「思ってねぇならいいんだな?」

 専務の悪びれる様子もない態度に、盛大な舌打ちが聞こえた。

「要件は棗を通せ」

「例の件についてだ」

「今ここでしなくてもいいだろ!?」

 苛立ったように須王が言う。

 例の件?
 
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