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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

「そ、それは。あたしはただ……」

「俺よりあいつがいいって?」

「誤解よ、あたしは……」

「誤解? 俺はお前を唯一無二の恋人として愛したつもりだったが、それは誤解だったって?」

「……つ、付き合うと話してなかったから、須王がそう思っていないと思ったから、ごめん……」

「言わなければ自覚がねぇと? じゃあなに、俺が棗や裕貴や三芳や小林の前でお前とは付き合ってねぇって言えばよかった? それとも隆なんてぽっと出の奴とか渉とかに、お前は俺の女じゃねぇからリボンをつけてお前にやるとでも言えばよかったのか?」

「……そ、それは……」

 嫌だ。
 須王があたしを付き合っていないと断言したら、あの愛の告白は、あのセックスはなんだったのかと思ってしまうと思う。

 それをあたしはしたんだ。
 須王に聞かせたんだ。
 
 しゅるりと音がしてネクタイが外されたと思うと、あたしの両手をあたしの後ろでひとまとめにして、ネクタイで拘束してしまう。

「須王……っ、ちょ……っ」

「俺がお前に笑って貰えるまで時間がかかったのに、あいつにはああやって可愛く笑うんだ? それで、たまたま会っただけだって?」

「渉さんは須王の身内だから……」

「名前を呼ぶな!」

 怒りの声に震え上がる。

「俺はあいつが嫌いだと、だから昔の話もしたのに」

「……っ」

「よりによってお前が、俺を裏切るなんて」

「裏切ってないっ、あたしはただ……」

「ただなんだって? そこまで俺が嫌がることをしてぇのか?」

「違……ひゃっ」

 須王がキャミを首元まで捲り上げたため、外気が直接肌にあたる。
 
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