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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

「……キス、がいい」

「はは、エロ」

 それでも須王はあたしの返事に満足したみたいで、いい子いい子とあたしの頭を撫でた。

「……あのね?」

「ん?」

「専務のこととか、誤解は解けた?」

 ふっと口元に笑みを零し、優しく細められたダークブルーの瞳。

「ん。だけど抗いながら感じまくっているお前を見てると、誤解したままでもいいかなって」

「そんなはずないでしょう、まったくもう!」

 彼は屈託なく笑うと、あたしを抱きしめて言った。

「俺、本当にお前が可愛くて仕方がねぇんだわ。今の方が前より溺れてるかもしれねぇ。毎日一日中抱き合ってても、飽きねぇ自信がある。……お前は?」

「……っ」

「少しは俺に溺れてくれてる?」

 こくりと頷くと、また彼の胸の中に引き寄せられ、唇が重なる。
 ちゅっちゅっとリップ音を立てて、目が合えばずっと触れる唇は、やがて角度を変えながら貪るようなものに変わる。

「……キリねぇな。またセックスする?」

「しません」

「はは、冷てぇの。お前限定での絶倫の俺にさ」

「時と場合と場所を考えてね」

「俺の愛情は、そんなものは選ばねぇの」

「あのね……」

「悪ぃけど、理性はきかねぇから。常識とかそんなの通用しねぇくらいに、俺はお前が好きすぎて、お前の可愛くて悩ましい顔を見てぇんだよ」

「……っ」

「だから俺、さっきイクの我慢しただろ? 自分だけがという時期は終わって、お前の気持ちよさそうな顔見てる方が、クセになるかも」

「……あたしは。ひとりじゃなくてふたりで気持ちよく……なりたいけど」

 須王は顔を傾けて、あたしの頬に自分の頬をすり寄せてきて笑う。

「はは。だったら今度は俺もイクわ。お前の中で」


 ……須王の仕事用のスマホに電話がかかってくるまで、なにか離れたくない気分で、抱き合ってキスをしていた。

 どこまでもベリームスクの香りを漂わせるこの男が好きでたまらなかった。
 
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