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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
帰社後――。
車を運転しながら、須王が笑う。
「お前がなればいいだろう、課長。俺が課長するよりもよほど現実味がある」
「いやいや、そっちの方が現地味ないから!」
「育成課、元々お前以上に知識ある奴いねぇじゃん」
「あたしはそんな……」
「お前の顧客フォローと管理が徹底していたから、あのデブなにもしねぇで判子だけでやってこれたんだ。下のふたりなんてお前の批判しかしていなかっただろうさ。だからお前に出来たことを、出来ねぇ」
企画百本ノックのことだろうか。
「……今、俺がプロジェクトの方にお前を使ってるから、お前企画の仕事も出来てねぇよな」
「あ、メールのやりとりとか電話は合間に入れてるから大丈夫。あとはパソコンの表計算やグラフというものが出来れば、パソコン作業も早く終わるんだけど」
「なんで必要?」
「育成の伸び率はやはりぱっとわかった方がいいじゃない? 表でもグラフでも。そこがさっさとクリアしないと、次の話題にいけないでしょう」
「はは。恐らくそこまで考えている社員は、他にいねぇな。大体パソコンなんて、ネットで遊ぶ道具になってるだろ」
「え、でも女帝は……」
「お前、三芳を部下に使え」
「へ? 受付じゃない。あなたの秘書もやってるでしょう?」
「……俺、体制を変える」
須王の横顔は厳しい。
「このままじゃ、エリュシオン潰れるぞ」
「……っ」
「潰さねぇためには、変えるしかねぇ」
「でも味方がいないよ? 誰がスパイなのかもわからないんだから」
須王は黙ってなにかを考え込んでいた。