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エリュシオンでささやいて
第3章 Dear Voice
「社内なら余計、手を出さねぇよ。あることないこと言われて、俺の女面されたくねぇし」
「へぇ……」
あたしは、社内に居ますけどね。
あたしは、あることないこと皆に言って、早瀬の女面はしないと思っているんだ?
その根拠は?
聞いてみたいのが、一割未満。聞きたくないのが九割以上。
――性処理でもいいって言うなら、抱いてやるけど?
ただの性処理には人権はないよね。わかっているから聞きたくない。
「俺、見境なく女に手を出すほど、女に困っちゃいねぇし、逆に女なんてうんざりだ。用があるから声を掛けたら、俺が告ったことになってる。告られたの断れば、あることないこと騒ぎたてる。俺が年中発情して女食ってる男になってるしな。……大体俺、昔から女は嫌いだし」
「……へぇ」
女嫌いだと言った時の声音が変わった気もしたけれど、モテる男は言うことが違う。世の男に刺されるよ。
はは、なに? 女が嫌い?
あれだけ啼かないあたしにセックスして吐精しているのは、オスの本能だと、その行為に心はないんだよと、あたしに念押しでもしてますか?
「それに、俺には……お前がいる。他は必要ねぇし」
「……へぇ……」
艶めいた声で、専属性処理がいるからと言われた気がして、あたしは悲しくなって、窓の方を向いた。
「……。少しぐらい信じろよ。大体俺は忙しい。暇さえあれば曲作ったりアレンジしねぇといけねぇし、抱えているイベントもたくさんある。あちこち顔を出したり取材とかで時間とられて、そん感じで三ヶ月先までスケジュールが詰まってる。そんな疲労困憊の中で、女の愛想なんてとってられるか」
「へぇ……」
その割には、結構ホテルに連れ込まれますけれどね。
毎日でもセックスが出来るくらい精力が有り余っているのなら、長きに渡って、ではなく一夜限りの女性が沢山いるということですか。
それをあたしに自慢して、なにを期待しているんでしょうかね。
嫉妬する仲でもあるまいし。