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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
 

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 向かったのは、病院近くのショッピングモール。
 横浜ほどではないけれど、最近出来て話題になっている場所でもある。
 
 地下駐車場に行くとたくさんの車が停まっていて、なかなかに空きスペースがない。二周目でようやく見つけた場所に、須王がハンドルを切りながら普通にバックをしているのを見て、思わずじっと見てしまう。

「どうした?」

「いや……そんなに狭い場所にうまいなと」

「東京でこれくらい出来なきゃ、ずっと走ってるしかないだろうよ」

「はは、そうだね。赤レンガの駐車場が大きくて空いててよかったよ。本当によかった……」

 今思えば無謀な運転をしていた。
 よく無事で帰って来れたものだ。

「今度慣らせばいい。こっちでもアウディの方でも。国産がいいなら、なにか買うか?」

 あめでも買ってやるか? と言わんばかりのごく自然な会話の流れ。
 本当にこの男は、どれほどお金を稼いでいるのかわからないけれど、金銭感覚がおかしい。
 まあ、あれだけ立派なマンションを王城にしているのなら、付属品も大した価値がないのかもしれない。

「いりません!」

 きっぱりと拒絶すると、愉快そうに須王は笑いながら、あたしの頭をぐしゃぐしゃにした。

「な、なにを……」

「なんだか、最近特にお前が可愛くてさ」

 さらりと、場所も構わず、甘い言葉を吐く王様。
 
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