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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
ショッピングモールはまだ真新しく、どこもぴかぴかに磨かれていて、天井が高いアーケード式になっている。
デパートではないため、上階に店が入っているわけではなく、東西南北のエリアにわけられ、それぞれが三階建てとなっており、パワーストーンのお店は雑貨にあたるだろうと、エリアマップを開いて見た。
「ええと……『星の秘密』はどこかな……」
案内板で、小林さんから聞いたお店を探す。
ネットで調べたところ、なんでも「Secret Stone」と呼ばれる会社のチェーン店らしく、店名が星以外にもお店は『月の秘密』『鏡の秘密』『時の秘密』など、東京にたくさんあるらしい。
中でも『月の秘密』は木場をちょっと過ぎたあたりだから、会社帰りにでも行けそうだ。
「WESTの二階だな」
須王の指さしたところには、目的の名前がある。
ショッピングモールはアトリウムみたいなところから各エリアに行くか、連絡通路を通らないと行き来できないようで、一階のアトリウムからWESTエリアに手を繋いで歩いて行く。
洒落たショッピングモールを颯爽と歩く須王の姿に、買い物客がざわめくこともあったが、彼は心配するあたしを一笑に付して、あたしと手を離すことはなかった。
「ま、マスコミに知られたら……」
「俺、ただの音楽家だから。他の奴に夢を売っているのは俺の音楽で、俺じゃねぇ。だからいいんだよ、誰が言ってこようが、俺の女はお前だけだ。別に隠す必要もねぇよ。これからも長い付き合いなんだ、今からそんなんでどうするよ」
長い付き合いなんだ。
……そうなんだ。
「おい、こら。にやにやするんじゃねぇよ。そんな顔してると、ここでディープかますぞ?」
あたしは顔からは、さっと笑いが消える。
「あはははは。残念」
須王はあたしの鼻を摘まんで笑った。