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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
……なにか彼は、恋人という形をはっきりさせたことで、甘々度と元気度が一段とパワーアップしているようにも見える。
今日だって会議や打ち合わせ以外にも、嫌いなはずの宮坂専務や長谷さんとも会っていたし、六階で(モニョモニョ)。
それなのにまるで疲れを顔に出さないで、笑って楽しそうな顔ばかり見せてくる。
棗くんを邪推していた須王はかなり辛そうで、あたしに過去を語る時並の深刻さを見せていたから、だから一層、彼の笑顔が見えるのはあたしも嬉しい。
飾られた植物やお店を覗き込むあたしと、隣で微笑む須王。
ねぇ、少しでも恋人らしく見えるかな。
九年前、こうやって校外で遊ぶことがなかったあたし達は、九年の時を経て、カップルの『普通』を味わった。
二階『星の秘密』――。
上りエスカレーターを降りて数件行ったところにある、小さなパワーストーンショップだ。
少し化粧が濃いけれど快活な雰囲気がする店員が、にこやかに声をかけてきた。
「いらっしゃいま……あ!」
「げっ」
須王と顔を見合わせ、お互いに驚いた顔をする。
「あらぁ、須王さまぁ! 会いに来てくれたの!?」
……ああ、小林さんの奥様って確か、幻の逸品ばかりを持たせてくれたひとだよね。須王の大ファンなんだよね。
美味しく皆で頂きましたなんて、絶対言えない。
口が裂けても言えない。
須王は小林さんを借りている手前、かなり引き攣って完全に引き気味で相手をしているが、奥様はかなり肉食系なのか須王をロックオン状態のようだ。