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エリュシオンでささやいて
第9章 Loving Voice
「その人間関係の破綻を怖れる理由も様々なパターンがあります。社交性やコミニュケーション不足、相手を激怒させてしまったため、不安と恐怖によるトラブル。どういった種類でしょう?」
難しい。
なんと言えばいいのか。
「ええとですね、こうあたし達の力でどうにも出来ない、理不尽な悪意というか、そうしたもので否応なくトラブルに巻き込まれ、危険が迫っていて。少なくとも仲間を疑う環境にはしたくない」
夫人は石を選別していく。
「お望みなのは、安らぎですか、絆を強くすることですか、愛情の補填ですか」
「すべてですね。とにかく、仲間内で疑心暗鬼になりたくないです。それが結束になりますから。絶対裏切らないと思えるだけの信用も欲しいです」
また夫人は石をわけていく。
「トラブルを、皆さんでどう解決したいですか? 打ち勝ちたい、逃げ切りたい、他に助けを求めたい……」
「打ち勝ちたいです。逃げたり他をあてにもしたくない。解決出来ないと危険は続きますので」
「……わかりました。恐らくお客様を呼んでいる石はこちらになります。悪縁切りと絆の修復はアゲート(瑪瑙)」
赤やら茶やら灰色やら混ざった石の山を差し出す。
「セレスタイト(天青石)は、昂ぶった感情を抑えるのに適した博愛の石。感情からくる不和を防ぎます」
綺麗な水色の石が差し出される。
「ライトニングクォーツ(雷水晶)は、ネガティブな思考を改善して、想いが強ければ強いほど共鳴してパワーを増大させます」
なにやら中が白く濁ったような模様がある水晶が現われた。
「モリオン(黒水晶)は、理不尽な災厄を防ぐ、魔除けの石。パワーがある石です」
今度は黒い水晶が差し出された。
「勿論、別のものでも構いませんし……」
あたしは、黒水晶と雷水晶を魅入ってしまう。
棚を見ていた時から、なにか透明なクリスタルばかり見ていた気がする。