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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
  

 ……確かに茂は精神的に痩せた。
 可能性はゼロではないが、見ている限りに置いて自主的に心を痛めるような社員はいなかった気がする。
 企画部を盛り上げようと若手も頑張っていた。

 それがなぜ突然集団辞職?
 本当に辞意を表明したかは、今村部長しかしらない――。

 社長が社長室に行こうとした時、須王が引き留めた。

「社長、ひとつ伺いたいことが」

「なんだね?」

 社長は重役達を先に社長室に行かせた。
 
「ここに集まった人間は、社長の思惑を知って動いた側か、知らずに拒んだ側だということですか?」

「そういうことになる」

「上原チーフ」

 突然須王があたしの名前を呼ぶから、驚いてまたおかしな奇声を上げてしまった。……恥ずかしい。

「あなたは、誰かに情報を流出して欲しいと言われて拒んだり、誰かから他の社員を試して欲しいと、頼まれたか?」

「いいえ」

 あたしははっきりと言った。

「あたしは、情報を勝手に盗まれた側です」

 ああ、須王も同じ疑問を心に抱いていたんだ。
 社長のお気に入りの須王ならまだしも、社長とあまり離したこともないあたしが、なぜどちらの区分けにも属しないのかと。
  
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