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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
オリンピアのHADESは結局ボーカルも決まってはいるが、雑誌の特集にはわざと顔の全貌を出さずに、一部だけの露出にして、マスコミを煽る戦術のようだ。
音楽よりボーカルの顔に注目を浴びている現在、それにより視聴者の興味を引くかも知れないが、あくまで音楽重視の企画を作っていた須王にしてみれば、別物になった企画として割り切れるようだ。
エリュシオンの選んだ演奏者と広告手法にて、須王が企画者だとオリンピアは言ったそうだが、須王はマスコミ各社へのFAXにて関わりないことを主張した。勿論パソコンの文字で。
朝霞さんは、本当にオリンピアが須王を引き抜けると思っていたのだろうか。このわざとらしい子供のようなやり方で、音楽を神聖視する須王が靡くわけはない。……それを見抜けないはずはないのに。
だから思ってしまうんだ。
オリンピアから須王を遠ざけているのではないかと。
考えすぎかな。
だけど須王にそう言ってみたら、須王はなにも言わなかった。
新HADESプロジェクトは、女帝が休み中はあたしが須王の秘書として動き、彼が言う構想を、あたしがパソコンにまとめる。
なんでも須王のパソコンに差し込んだUSBは、やはりというべき棗くんからのプレゼントで、社内すべてのネットワークを遮断して、セキュリティを強化させつつ、棗くんだけがアクセスできるという魔法のアイテムだったらしい。
確かに社内の膿出しが完全に出来ているとも言い切れない今、プロジェクト変更にて続行する旨を皆の前で宣言したのだから、まだスパイが残っているとするのなら、必ずこのプロジェクト内容を知りたいはずだ。
そのため、信じられる仕事用のパソコンは、あまり使われていないのにあたしのパソコンより高性能のように思える……須王のパソコンのみとなった。
元々須王はメモをするタイプではなく、すべて頭の中に入るという天才的な記憶の持ち主だ。
そのため頭の中で既にYESやNOで進むフローチャートが出来て、こっちの選択が駄目だった場合は、こちらに進むなどの全体像が、頭の中で出来上がっているらしい。