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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
「別に須王にも出させるから、あなた達はいいわよ」
その須王は両耳を押さえて聞いていないふりをしながら、小林さんのところに赴いたようだ。
「まぁ移りたいのは、これだけが理由じゃないけどね。ここの病院に、私達以外の面会を謝絶するように連絡はしてあるんだけれど、おかしな男達に威嚇されて警備員が駆けつける騒ぎがあったらしいの。勿論、私達の敵かどうかわからないけれど、これで二度目なのよ。それにスタジオの方が色々と機器も揃っているし。出来るだけ早く移った方がいいと思うの。出来れば明日には」
あたし達は頷いた。
「小林さんは大丈夫かなあ」
小林さんは須王と話している。
最初こそくったりして、痛み止めと熱を下げる点滴をしていたが、今はそれも取り外され、いつ見ても上体を起こして笑い声を響かせて元気そうには見える。
「小林さん、須王のスタジオに移っても構いませんか?」
「おお、俺は退屈で退屈でさ。ここに居たら病人にされて、骨も完全修復しないから、早く動きたいわ」
「いや……それはまだ無理のような」
須王は笑った。
「早く治せよ。俺、お前以外のドラム、入れる気はねぇから。曲を作ったら身体に叩き込むから、回復したら一発でいけ」
「がはははは。本当にお前は無理で強引な注文ばかりだな。ま、慣れたけど。むしろ、そういうのがなければお前じゃないというか。おお、早く治すぞ。だけど退院出来るほどになったということは、嬢ちゃんのブレスレットの効果はあったんじゃないか?」
「え、嬉しい! あたしというより、作ってくれた奥様に感謝ですけど」
あたしはブレスレットをなでなでと触っていたら、棗くんも含めた皆もそれぞれの方向を見ながら石を撫でていて、なんだか笑えた。