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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
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スタジオに戻るのは平日の金曜日だ。
あたしと須王は先に会社に行くことになり、女帝は金曜日まで有給予定を変更して、スタジオに小林さんを無事送り届けられたのを確認してから、棗くんに会社まで送って貰うことになった。
――だって、美保が私が出る月曜日に休むかも知れないじゃない? だから私出て、あいつを締め上げる!
恐らくは須王もそれを懸念して、一日早く女帝を出させたのかも知れない。
後から来た女帝は、エリュシオンのあまりのひとの少なさと暗さとやる気のなさに、ここは墓場だと嘆くよりも怒り出し、皆に発破をかけた。
「ねぇ、この状態でいいわけありませんよね!? もっと死に物狂いで着実な仕事をしないと、会社潰れますよ!?」
それは皆が思っていても口に出さなかったこと。
それを口にした女帝は、無反応な社員達を見て、裏で悔しいと泣いた。
「私だってひとのこと言えないのはわかっている。私だって早瀬さんを追いかけて、この会社に来たんだもの。音楽が好きだったわけでもない、愛社精神に溢れていたわけでもない。与えられた仕事だけを淡々とこなしていただけ」
「奈緒さん……」
「だけど、それなりに培ってきたものはあるわ。新人に負けないわよ、私。そりゃあ柚の知識には負けるかもしれないけど、柚の知らないこともやって来た。だから頑張ろうね、柚。お互いフォローしあって!」
「うん! あたしは細やかな気配りは慣れてないし、仕事の顧客のフォローしか出来ないの。だから奈緒さんを見習わせて貰う。あたしに出来ることはなんでも言うから、気軽に言ってね」
「さんきゅ。心強いわ!」
「あたしも!」
やる気がある社員とエリュシオンを守れるのは非常に心強い。
あたしも頑張れる気持ちになる。
午前中は各自引き継ぎの仕事をした。
あたしは統合されたイベント課に、やってきたすべてのことを引き継がないといけない。
寂しいな、育成課がなくなってしまうのは。
企画の育成オンリーで昔からやってきたのに。