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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
「あはははは」
しかし須王の笑いの種になってしまい、涙目のあたしの頭を須王はよしよしと撫でるが、キッと振り払う。
「あそこに、盗聴器があったんだろ?」
「え?」
女帝が驚いた声を出す。
「私調べたらなにもありませんでしたが」
「それを柚が見つけて、モグラの歌を歌って発見を知らせてくれた……あははははは」
笑点では棗くんに怒っていた須王は、あのおかしな歌では怒るどころか、棗くんのセンスを褒め称えているようだ。
「なんであるとわかったの?」
「奈緒さんが怒る度、美保ちゃんがやたらちらちらとタップを見ていて」
「かなりの怒声だったからな、盗聴している奴が怒鳴り出さないか心配だったのかもしれねぇぞ?」
案外それがアタリかもしれない。
あの場にいるだけでキンキンとしていた声が、盗聴器を通して爆発したら、耳が痛いどころか壊れそうだ。
「奈緒さんのおかげで見つかったの。ありがとう」
すると女帝は複雑そうな顔をした。
「タップが盗聴器……うーん、わかるはずがないよね。で、なんで柚はそれがわかって、歌を歌ったの?」
「あたしじゃなくて、棗くんから借りた盗聴器の探知機が歌ったの。タップに探知機を向けたら、変な歌声が流れて。だからあの歌はあたしが歌ったんじゃなくて、棗くんの悪戯なの」
あたしは必死だ。必死になればなるほど、須王が笑う。
もう、黙ってよ!