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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
 

「いや……柚が歌ったのなら、相当追い詰められているんだなとは思ったけど、棗……あいつも中々やるわね。だけどタップならすぐ取り外せば……」

 女帝の言葉に、指で笑いの涙を拭きながら須王が言った。

「この際だから、大々的に盗聴器を外す業者に頼む」

「え、そんな堂々と?」

「ひとがいねぇから、やりやすいだろう。タップだけじゃねぇかもしれねぇからな。基本、電話回線やコンセントの裏側にしかけられた盗聴器は、資格を持ってねぇと取り外しが出来ねぇ。それもあって、先に社長に申し出た」

 社長は今日も重役とエリュシオンに出社している。
 確かに今朝、須王は社長室に行ったけれど。

「社長は、刑事責任を追及する気だ。エリュシオンはどこに攻撃されているのか。本格的に反撃に出るつもりだ」

 それがオリンピアだったら、朝霞さんはどうするんだろう。
 だけど朝霞さんは、それくらい視野に入れていると思うんだ。

 つまり、それに対処出来る準備も自信もある――。


「今日で三人退職願いを書いて、今村部長ではなく直接社長に持って行ったそうだ。そりゃあ今まで気楽にしてきた社員のひとりひとりに、他の奴の仕事がのしかかるからな。恐らくそれは来週も続くだろう。誰ひとり、頑張ろうという奴がいねぇから、このままでは最悪……俺達しかいなくなる」

 須王は厳しい顔をして、目を細めた。


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