この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
  
   ・
   ・
   ・
  
   ・
 
 久しぶりのハデス御殿には、小林さんが離れの方でテレビを見ていた。
 かなり退屈していたらしいが、病院にいるより精神的に元気そうだ。

 棗くんはもう少しで学校を終える裕貴くんを乗せて、帰って来るらしい。

 女帝はスタジオに着くと車内で目を覚まし、元気ぶってはいたけれど、真っ青な顔色はまだよくなっていないから、部屋で寝かしつけた。

「すぐ元気になるから。ごめんね、柚……」

 喧嘩が強くても女帝だって女の子だ。
 むしろ、ああいう場面を見てもけろりとしているあたしの方が、女の子ではない気がする。

 なんで最初に見た時の驚きこそあれ、その後は見慣れてしまっているような、冷めた心が胸に残るのだろう。

 釈然としないものを胸に抱えながら、久しぶりのハデス御殿を掃除をしていると、元気のいい裕貴くんの声がした。

「柚、ただいまっ!!」

「おかえりなさい」

 裕貴くんは弟みたいだけれど、ネクタイとブレザー式の制服は、彼を年齢以上に大人びてみせる。
 あたしと須王が出会ったのが、ちょうど裕貴くんの年頃。だから余計眩しく感じてしまう。後悔ばかりのその年代を、元気に生きている裕貴くんを。

「須王、どこで見る?」

 後ろから、車の鍵を持って棗くんが現われる。

 今日はワイン色のスーツに同色のイヤリングをつけて髪を垂らした、どこからどう見ても色気たっぷりの才女。
 あの腰回りなんて、あたしより細いんじゃなかろうか。
 もう本当に棗くん見たら、あたしは女で生きていく自信をなくしてしまう。

 しかも須王と本当にお似合いだ。
 見ているだけでため息が出る、超絶美形カップルだ。
 あたしは所詮モグラだしと、やさぐれて言い訳してみるけど、まるで無意味だ。

「ああ、柚も一緒に見るって」

「え、上原サンいいの?」

「うん。大丈夫、なにが出てきても平気」

 あたしは拳にした手に力を入れてみせた。
 
/1002ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ