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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
 


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「……ん」


 気づくとあたしはベッドに寝ていて、ベッドのヘッドフレームにあるライトが、視界にぼんやりとしたオレンジ色を広げていた。

「大丈夫か、大分うなされてたぞ」

 憂いを帯びたダークブルーの瞳。

 ベッドの縁に腰掛けた須王が、心配そうにじっとあたしを見下ろしている。

「なんでここに……」

 この広い部屋は、仕事場を兼ねた須王の部屋だ。

「突然ぶっ倒れたから、俺の部屋に連れてきた」

 須王の大きな手が、あたしの頬を撫でてへばりついた黒髪を払ってくれる。

「皆は……」

「もう夜も遅いし、しばらくずっと病室での仮眠ばかりだったから、今夜は早く寝かせた」

「そっか……。あたしも部屋に戻るね……」

「なんでだよ、お前は俺の部屋だろ?」

 起き上がって立とうとすれば、甘い声を囁きながら、身体に須王の腕が巻き付き、きゅっと抱きしめられる。

「いやでも……」

「俺をひとりで寝させる気かよ?」

「今までそうだったでしょう」

「今までとは違うだろ、俺達の関係。相思相愛の恋人が、別々のベッドで寝るなんてありえねぇ」

「……っ」

「ベッドはたくさんあるのに、どうして俺と離れたベッドで寝たいわけ?」

 須王の指があたしの唇を割るようにして撫で上げる。

「お前、恋しさに俺を泣かせたいの?」

「そ、そんなわけ……」

「じゃあ、何でだよ」

 睦言のように囁きながら、ぺろりぺろりとあたしの下唇の内側を舐め、歯茎まで舐め上げられる。
 
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