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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
「お預け食らって、仕事出来るわけねぇだろ? 俺の仕事の出来、お前にかかってるから」
そう言いながら、指で触れていた下唇をもぐもぐと唇で甘噛みするようなキスから、ちゅくちゅくと音をたてて一定のリズムで角度を変えると、ちゅるりと口腔内に舌を忍ばせ、あたしの舌を吸う。
「そ、そん……ふぁ…んっ」
同じリズムで身体を揺らしながら、須王の長いキスに酔い痴れるころには、頭がぼぅっとなり、熱くなった身体を須王に預けた。
あたしの力がなくなっても、須王は上から被さるようにしてキスをして。
その執拗なまでのキスが、あたしの中にある疑念を抱かせる。
「ねぇ、須王。あたし……寝言で変なことでも言ってたの?」
彼のシャツを握りしめながら、息も絶え絶えに聞いてみると、須王はあたしの身体を両腕でぎゅっと抱きしめて言った。
「なにも言ってねぇよ」
「本当に?」
「……ああ」
須王は頬をすり寄せて、低く聞いてくる。
「夢、覚えてるのか?」
「……起きると詳細は忘れてしまうんだけれど、天使の頭が……」
「頭?」
「うん、天使の頭が落っこちる気がする。少なくとも今見たのがそうで、いつももそんな気がしたの。どの夢もグロいというか」
「天使って……お前が見た?」
「うん、瞋恚だっけ……掟のひとつ、怒っちゃいけないという歌を口ずさんで」
「………」
「凄くリアルなの。なんであたし……そんなの夢で見るんだろう」
「それだけか? お前が思ったこと」
「………」
「柚?」
「……ちょっとね、不安というか」
「どんな?」
「もしかしたらあたし……天使の死ぬところを見ているかもしれない」
須王に縋り付くようにして、言った。