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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
「すまない。俺がもっとしっかり組織を潰していれば、お前はそんなおかしなことに巻き込まれずにすんだのに……」
その須王の言葉ではっとした。
興奮して、滔々と喋ってしまった。
「……謝らないで。須王は、巻き込んだと責任感じちゃっているのかもしれないけど、でもなんかね、須王が味わった……得体のしれない脅迫感が、ほんの少しでもわかって嬉しい気もするんだ」
「………」
「エリュシオンの王様に、少しずつ近づいていけたら……って、んんっ」
須王があたしの唇を奪い、最後まで言葉を続けさせてくれなかった。
ちゅくちゅくと音をたてて、角度を変えて唇を食みながら、ぬるりとした舌であたしの口腔内を蹂躙する。
この溶けてしまいそうなキスに、天使の夢も薄れていく。
甘い声を漏らして長い口づけを堪能すると、くたりとなったあたしは須王の身体に包まれる。
優しいダークブルーの瞳があたしを見ている。
「……柚、これから一緒に音楽作らねぇ?」
「え?」
「すごくお前と溶け合いてぇんだ。身体だけではなく、もっと心を。そう思ったら……俺には音楽しかねぇから」
「あはは、音楽馬鹿だね」
音楽にあたしを触れさせるのは、悪夢でうなされたあたしへの、彼なりの励ましなのだろう。
そう思い、気軽に馬鹿と口にしてしまったのが、王様の機嫌を損ねてしまったらしい。
「……ここで、抱くか?」
「さあ、音楽を作りましょう」
「あっちに、電子ピアノがある。動ける?」
「うん」
須王はあたしを後ろから抱きしめて、コメカミや頬にキスをしながら、寝室の隣にある部屋に入り、電子ピアノの前の椅子の上にあたしごと座った。
大きな机の上には、やはり難解な音符なのか字なのかよくわからない象形文字が書かれた紙が積まれてある。