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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
 

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 ほとんど須王が作ってあたしがいちゃもんつけたような形の、初めて形にした共同作品。
 楽譜にきちんと書いていくと、音が溢れて感無量となり泣きたくなる。

 この曲にも、須王からの愛情が感じられるような気がするんだ。

 それはミディアムテンポの短調から、アップテンポの長調のサビが転調して短調になったり、Cメロと思われる部分はバラードのようなゆったりと。
 とにかく色々な要素がぎゅっと詰まっていて、一曲にしてしまうのが勿体ない。

 ギターやベースの見所もあるらしく、見所過ぎて裕貴くんは目を回して倒れそうになっている。

「ひどっ、これいじめ!? 俺の力不足を吊し上げる曲!?」

「そうならないように、練習だ。力不足にはさせねぇから」

「うへぇ!? マジにこれを俺に弾かせるの、これを!?」

「ただの音楽家だって出来るんだ。自称ギターリストだって出来るだろう」

「須王さんの基準がおかしいって」

 ぶつぶついいながらも、裕貴くんは猛特訓。
 棗くんといえば、大した練習をしなくても涼しい顔で弾けてしまうひとらしい。
 小林さんはまだストップがかかっており、演奏を聞いたり楽譜をみたりしながら、無理無理と青ざめる割には両手や両足がドラムを叩いているかのように動いている。

 女帝とあたしは、彼らをプロデュースすべく企画を文書や企画書にするために、パソコンと睨めっこ。棗くんに教えて貰ったという女帝のグラフに、思わず感嘆の声が上がってしまう。
 そこに裕貴くんが休憩時に、アニメーション的な動きもささっと付け加えたために、驚くあたしと女帝は、棗くんに原始人と言われてしまった。

 そんな慌ただしさに忙殺されていないと、思い出してしまう。

 怪しげな組織が残していった痕跡を。

 十ある掟のうち、十悪や十善戒に対応する四つの音楽が流れていた。
 天使が担当していたひとつを除けば、あと五つ対応している人間がいるのかと思えば、引きこもりになりそうだ。

 だから余計に、大丈夫と思える仲間達とハデス御殿という要塞の中で躍起になってしまうんだ。
 
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