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エリュシオンでささやいて
第10章 Changing Voice
 

「柚、三芳も外にでるぞ」

 須王の声に、あたしと女帝は顔を見合わせる。

「もうそろそろ始めようか。ボーカルの選出」

 それはあたしに任せられた、なによりも慎重にしないといけないものだ。

「もう曲は出来上がっている。企画書で俺のコンセプトもわかっている。見つけろよ、ぴったりな奴を」

「……何気にハードル上げるね」

「期待してる。ボーカルであいつらの音楽もかき消される可能性もある。ボーカルは両刃の剣だ」

「ますますハードル上げたね」

「はは。ま、頑張れ?」

 須王はあたしの頭をぽんと叩く。

「朝霞さん、まだ連絡つかないの?」

 女帝の問いにあたしは頷いた。
 
 あたし達が関わった者達が組織の掟の名の下に制裁されるのなら、朝霞さんも危険なのではないか。そう思い、須王達に相談の元、接触を試みているのだが一向に電話は繋がらない。オリンピアにかけてみれば、長期出張と言われて今に至る。しかも女帝の名前でようやく、だ。

 オリンピアのHADESプロジェクトは、大コケをした。
 金をかけて大々的に宣伝はしたが、須王の企画にそぐわない者達が集まれば、いずれは破綻する。

 最初はメディアにも取り上げられて悔しい思いをしたけれど、二週間経てば話題にも上らず、ネットにもよく書かれていなかった。
 なんとも複雑だ。

 人気の落ち目と同時に朝霞さんが出張。
 朝霞さんは自分の仕事に責任を持つ男だから、オリンピアのプロジェクトがコケたからと逃げ出すひとではないのだ。

 真理絵さんも欠勤しているらしい。

 どう思っても、きな臭くてざわざわする。
 
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